
6月26日、首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアートコースで開催されたネットワークメディアアート基礎/演習Ⅰ「ViZiMOワークショップ」の講評会に参加させていただいた。本ワークショップは提示されたテーマからイメージをふくらませ、3D空間サービス「ViZiMO」を活用して表現し、それをムービーにまとめるというもの。ツールの習得時間も含めて初回講義から最終講評会まで約1ヶ月というタフなワークショップだ。
昨年に引き続き、2期目となる今期の学生に渡邉英徳准教授が提示した課題は「時をカケル空間」というものだった。渡邉氏も指摘する通り、「ViZiMO」のようなオンライン3D空間サービスや「YouTube」のような動画共有サービスは時空の制約を緩和し、「”いつかどこかのだれかに”コンセプトを伝えていくこと」を可能にするサービスだ。「時をカケル空間」というテーマはこうした特長を表している。ポイントは「カケル」をどう解釈するか。「掛ける」「賭ける」「駆ける」「描ける」「欠ける」・・・様々な解釈が可能で、これを映像でどう現すかが悩みどころであり、見せどころでもある。
そうして生まれた作品の全作品プレイリストがこちら。
■「時をカケル空間」全作品プレイリスト
ワークショップは約5時間の長丁場となったが、講評というよりもなにしろ楽しく拝見させていただいた。「時」に対して各自が様々な解釈を加えることで視覚化していく様は日常の仕事で知らないうちに出来ていた「想像の枠」を破壊していく気持ちよさがあった。表現方法についても、ViZiMOをツールとしてフル活用し「こんな表現にも使えたのか」と思わせるものから、逆に空間を極限までシンプルにすることで登場人物の掛け合いを際立たせたものまで、多様な手法が試されていて興味深かった。
そして全体を通して感じたのは、すでにメディア・アートによって知られていることではあるが、テクノロジーによる新しい表現とアートは非常に相性がよいということだ。
私たちは新しい表現に向き合ったとき、どうしても最初は既存の表現に置き換えて理解しようとしてしまう。古くは映画を「活動写真」といったこともそうだし、ネットでも「ホームページ」「電子メール」といった既存の概念をメタファーとした用語がある。「仮想空間」「バーチャルワールド」もそうだ。これらは理解を助ける反面、新しい表現の本質的な特徴を隠してしまう危険性もある。ネット黎明期に紙の会社案内を置き換えた「だけ」の「企業ホームページ」が乱立したことを覚えている方もいるだろう。
アートにはそもそも新しい表現を提示するという性格がある。「オンライン3D空間」などの新しい表現手法にこうした性格が発揮されることで、既存概念のメタファーによらない本質的な価値が掘り起こされていくに違いない。今回のワークショップの課題をあえて挙げるとすれば、そうした本質的に新しいという表現にはまだ至らなかったという点だろうが、これは期間的にも制約のある中では高すぎる期待かもしれない。
ただ、私がそういった期待をしたのにも理由がある。実は以前、渡邉英徳准教授の作品「SIGGRAPH Archive」を拝見したとき、「空間内に空間を展開する」という表現に新たな概念を垣間見たのだ。
本コースはツールをセカンドライフに変えて後期も続くという。学生の方達にはぜひ師を越える作品を生み出してほしい。


