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【OGC2008レポート】「電脳コイル」で見る拡張現実の未来

2007年にNHK教育テレビで放送されたテレビアニメ「電脳コイル」をご存知だろうか?ジブリ作品やエヴァンゲリオンなどを数多くの作品を手がけアニメーターとして高い評価を得ている磯光雄氏が原作・監督・脚本を、アニメーション制作をマッドハウスが担当しており、2007年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞及び第7回東京アニメアワードTVアニメ部門優秀賞も受賞し、アニメ業界以外からも非常に高い評価を受けているアニメーションだ。


電脳コイル (1) 通常版
電脳コイル (1) 通常版


同作品はもちろんアニメ作品単体として見ても実に優れた作品ではあるのだが、面白いのは作品モチーフに「オーギュメンテッド・リアリティ(拡張現実)」を使用している点だ。
作品の舞台は「電脳」と呼ばれる技術が一般に普及している2026年の近未来の日本。人々は「電脳メガネ」と呼ばれる眼鏡型コンピューターでインターネットを利用し、街中にはバーチャルな情報が現実世界に重ねて表示され操作できるようになっている。そんな「拡張された世界」で毎回起こる様々な事件を小学生の主人公達が解決していくという物語で、こう聞くと「攻殻機動隊」のようなサイバーパンクな作風のアニメではないかと思ってしまうが、 オーギュメンテッド・リアリティ以外の描写は現代とさほど変わらず、むしろ素朴な作風が印象的で親しみやすい作品となっている。


電脳コイル (2) 通常版
電脳コイル (2) 通常版

この作品を題材に、GLOCOM仮想世界研究会に所属する山口浩氏と鈴木健氏がオーギュメント・リアリティ(AR)の最新事情についての講演を行った。


【OGC2008レポート】「スノウ・クラッシュ」から「電脳コイル」へ
山口浩氏


【OGC2008レポート】「スノウ・クラッシュ」から「電脳コイル」へ
鈴木健氏


両氏は、アニメに描かれる高度な拡張現実の世界は決して夢物語ではないと指摘し、むしろ今までの技術の進歩を振り返ると、「架空の物語」が「現実社会」に影響を与えてきたケースが多いという事実を解説。例えば1921年に発表されたチェコの戯曲「ロッサム万能ロボット会社」から「ロボット」という言葉が生まれた。またロボットを人間型にし二足歩行で動かす研究は世界でも日本が群を抜いているが、その根底には「鉄腕アトム」や「ドラえもん」などの影響があるだろう。最近では1992年に発表されたSF小説「スノウ・クラッシュ」から着想を得て生まれたセカンドライフが良い例だ。


【OGC2008レポート】「スノウ・クラッシュ」から「電脳コイル」へ


スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)


スノウ・クラッシュ〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
スノウ・クラッシュ〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)


両氏は、セカンドライフのような3D仮想世界は「仮想世界の中に現実を持ち込む」ものだが、オーギュメンテッド・リアリティは「現実世界の中に仮想を重ねた世界」であると語り、最近YouTubeで話題になっているオックスフォード大学の実験動画を紹介した。


Parallel Tracking and Mapping for Small AR Worspaces - extra


これはオックスフォード大学のアクションビジョン・ラボラトリーにより製作された映像で、カメラで撮影した現実の風景の上にバーチャルなオブジェクトを重ね合わせている。山口氏は「コンピュータが映像上の目印となる特徴点を実際の人間の目と同じように”ブレ”を利用して認識しているので、カメラ位置が動いても再生された空間の動きについていけるようになっており、まるでその場に存在するかのように見える」と説明した。
また、「電脳コイル」の主人公たちが学校で仮想の戦争ごっこを行うエピソードをとり上げ、将来的にこのオーギュメンテッド・リアリティの技術が確立した際、ゲームなどエンターテイメントの分野での利用が有効なのではないかと分析。鈴木氏は「『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する“スタンド”のようにお互いの分身となるキャラクターを出現させて戦う対戦ゲームがあれば面白そうだ」と語った。


ジョジョの奇妙な冒険 (1) (ジャンプ・コミックス)
ジョジョの奇妙な冒険 (1) (ジャンプ・コミックス)


さらに両氏は、ファッション、美容、医療、教育などの分野でのビジネス上の可能性も考察。今後さらにオーギュメンテッド・リアリティ技術が進めば、ちょうどセカンドライフでファッションアイテムの売買が盛んに行われているように自分の身の回りを飾る仮想アイテムが流行し、ゲーム的なデザインを生かす場がより広がるのではないかと分析した。


【OGC2008レポート】「スノウ・クラッシュ」から「電脳コイル」へ


Second Life Avatar Enters the World


また医療面では、心理療法の一種である「箱庭療法」の発展形として仮想世界でのリハビリテーションや心理療法が行われ、教育面では歴史や地理の授業で現地を仮想世界を通して「体験」することが可能になると分析し、仮想世界や拡張世界の前には大きな市場が広がっていることを示した。
最後に山口氏は、「現実世界の人間が街に出かけて仮想世界からやってきた人と会い、一緒に行動することができるようになる時代が来る可能性がある」と、現実と仮想が繋がり一つの「世界」となる未来を語り講演を締めくくった。


尚、GLOCOM仮想世界研究会では3月24日(月)にセミナー「AR時代の社会~『電脳コイル』の世界が来る~」を開催するとのこと。
セミナーの紹介及び申し込みはこちらから↓
http://www.glocom.ac.jp/xoops/html/


GLOCOM
http://www.glocom.ac.jp/


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